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「それでは私達の拠点へとご案内します」
マーガレットの言葉に悠は小さく頷く。
「姫様。お待ちください。この者が国からの間者だという可能性が」
「茶番は止めろよ。そもそもあんたが声をかけてきたんだ。いくら人材が欲しいとは言え、今さら忠誠を問われても無駄だろ。なんせ、こっちはあんたらの計画を知っているだからな。疑うのが遅すぎる」
悠の言葉にノエルは顔を背ける。その行動は悠の言葉の正しさを証明している。
だが、悠には疑問があった。なぜ、今さら確認を…忠誠を問う? 悠には忠誠とは言わなくとも姫の計画に乗ろうという意思はある。それをどうして確認しようとする?
「なぁ、ノエル。何か隠してんだろ?」
その問いかけにノエルの目がかすかに逸らされる。
「さぁ、行きましょう? 我々には時間が無いのですから」
ノエルに助け船を出したマーガレットの言葉に溜め息を付きながら付いていく。
一行は歩きながら複雑な路地を曲がっていく。カモフラージュだろう。
悠は振り返り、背後を確認する。つけているような人影は無い。なるほど、万全を期してカモフラージュしているのか。
しばらく歩き続けると酒場につく。悠とノエルが出会った酒場だ。
「おいおい…。いくらなんでも大胆だろ…」
酒場は当然大通りに面して作られている。こんなところを見られたら…
(いや、大丈夫か…)
よく考えれば姫は粗末な服を着ているし、ノエルのような騎士が酒場にいるのも馴染んでいるだろう。一番危険なのは…
(俺だな…)
この世界から見れば異世界の服装である悠が一番目立っている。むしろ、今まで疑われないことがおかしなくらいだ。
(後でこの世界の服を買わないとな…)
ぼんやりと考えながら悠はドアを開けるマーガレットに付いていく。
そこは昼間の酒場とは思えなかった。
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