第1章 競技開始

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現実はクソゲーだ。 そんな使い古された表現で物語を始めよう。 現実が求めるのは平均。それよりも優れたもの劣ったものはすべて異端として扱われる。 その事を知ってしまえば生きることさえも辛くなる。 これはそんな男の物語。 「3800連勝っと…」 自室のパソコンに向き合い呟く少年。その画面にはチェスの画面と将棋、さらにはオセロなどのいわゆる盤上競技が並べられている。 少年の名前は風見悠。引きこもりの17歳。理由はいじめ…というにはあまりに凄惨な事件のせいである。 少年は部屋に閉じ籠り、盤上競技を繰り返す。結局は確定している勝利の方程式をいかに隠して方程式を演出するか。その一極に過ぎない。 「あー、そろそろ寝るか…?」 時計は午後2時を指している。一般の学生はあくせくと授業を受けているだろう。 「まぁ、俺には関係ないか…」 呟いてパソコンの前を離れようとしたとき、メールが届く。 その見出しにはこう書かれていた。 「人生を変える魔法の言葉を風見悠にお届け!!」 その言葉に悠は戦慄する。書かれている内容にではなく、もっと単純なこと。 「なんで、俺の名前を知ってんだ?」 アカウント、登録名、メールアドレス。全てを見ても悠を風見悠だと認識する手段はない。 『あんた誰だ?』 メールを返す。普通は危険な行為の一つだが、悠は返信する。 するとすぐにメールが返ってくる。 『君の人生を変える神様だからね。君のことは知っているのさ』 『頭沸いてんの?』 失礼極まる返信。 新たな新興宗教という疑いが降り注いでくる。 すぐに返信。 『信じる信じないは君の勝手さ。でも、君はこう思っている。世界はごみだと』 胸を抉られる。 『だから…?』 『ただこう言えば良い。『シャッフル』…と』 悠は苦笑して遊び半分で呟く。 『シャッフル』 瞬間何かに引っ張られる。世界が回り、悠は柔らかい地面に着陸。 「は?」 悠は目の前に広がる大自然に呆然とするしかなかった。
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