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宣言通り八手で勝利した悠は男から差し出されたコインを受け取り唖然としている金髪の女性に顔を向けると、
「1000ペソスぐらいもらってて良い?」
平然と言ってのける。まるで当然の事をしたかのようにあっさりとうなずくしかなかった。
「んじゃ、1000ペソス貰ってく」
金髪の女性が悠の手に大きめのコインを二個おいた瞬間悠は驚いて目を見開いた。なぜなら…
「こ、これ500円玉じゃねーか!!」
そう、悠の住む日本。その通貨に他ならならない。ちなみに悠は一応財布を持っていて…。おまけにそのなかには5000円、いや、5000ペソス入っていて。
「異世界の癖に都合よすぎだろぉぉぉ!!」
心のそこから悠は声を張り上げた。
結局当初心配していた資金の方は問題無い。だが、一つ気になることがある。
それは、
「ねぇ、お姉さん。何か用?」
後ろを見ながら悠はそそくさと隠れた女性に声をかける。
その女性は先ほど助けた? 女性で…。
分かりやすくビクッとしながら悠に近づく。
「お、お礼がまだだったな…。先程は不本意にも助けられた。感謝している」
「お礼を言うときの言葉じゃないな」
その言葉に女性は声を詰まらせる。自覚は有ったらしい。
「き、貴様の疑似軍略競技の腕を見込んで頼みがある」
「疑似…は?」
「貴様が先程やったゲームだ。知らないとは言わせないぞ」
その言葉に悠は内心頷く。なるほどこの世界ではチェスをそう呼ぶのか。
「んで? それでなに?」
「貴様に会わせたい人がいる」
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