0人が本棚に入れています
本棚に追加
会わせたい人がいる。
女性のその言葉に付いていく悠。
女性は路地裏を曲がり曲がり、曲がり続けている。
「あのさ、俺を信用してないなら別に良いんだけど」
「…なんの話だ」
「惚けなくても良いのに。ここ、最初の場所の三本奥の路地でしょ」
その言葉に女性は目を丸くする。というより悠と出会ってからは驚いてばかりだ。
「よく分かったな」
「マッピングは得意なんだよ」
そして女性は路地裏へ入り今度は一度曲がっただけで目的地へ着いたらしい。
そこにはボロボロな家が一軒有った。
「ここ?」
女性は頷きドアを開ける。そこには家同様ボロボロな服を着ながらも気品を損なうことの無い雰囲気の女性…いや、女の子がいた。
「この子が俺に会わせたい人?」
「どうしたの? ノエル。そちらの殿方は?」
ノエルと呼ばれた女性に二人で質問をぶつける。
「お前ノエルって言うのか」
「言わなかったか?」
「初耳だ」
二人の会話を見て、女の子は言う。
「もしかして彼氏ですか? ノエル」
とんでもない発言にノエルは、顔色一つ変えないまま、
「こんなやつと付き合うくらいなら馬と付き合います」
当の悠は、
「お前、趣味大丈夫か?」
とても仲が良いとは言えない言葉を返す。
「姫様。こちらは軍師としての力を試すべく呼んだ男です」
「まぁ、そうなのですか。それでは、よろしくお願いいたしますね」
そんな風に悠を無視した話に悠はたまらず声を発する。
「ちょっと待て。お前ら何の話してんだ。てか、軍師? 姫様? なんなんだよ一体」
悠の問いに姫様と呼ばれた女の子は首をかしげる。
「あらあら、ノエル。そこさえも説明してないの?」
「説明を求められませんでしたので」
「相変わらずぶっきらぼうね」
「おい、良いから速く説明しろ」
「私はマーガレット・イルク・クラミナ。前国王の娘です」
静かに、だが、威厳の有る声で悠に告げた。
最初のコメントを投稿しよう!