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春。桜が咲く入学式日和。
都心部では数カ所に建てられた高校で入学式が行われる。
その内の一つである県立双葉高校も無事合格した生徒が次々と門をくぐっている。
親と並ぶ者。友人同士で歩く者。一人で向かう者。
個々それぞれが新たな一歩を踏み出す中で、二人の少女が門の前に立っていた。ご丁寧に他の人が邪魔にならないように真ん前ではなく、少し端の方を選んでいる。
「あー…今日いよいよか。やべえ緊張する」
男のような口調でやや沈み気味に言葉を放ったのは、相川七弥という少女。今日から双葉高校に通う生徒の一人だ。
「なあ、七海(ナナミ)。オレ変な所ないよな?」
自分のことをオレと言っているが、七弥の性別は女だ。何度でも言おう。女で当たっている。
小さい頃からガキ大将を務めていたための結果が男勝りという結果を生んだ。
「大丈夫よお姉ちゃん。制服も着崩していないし、髪も朝私が結んであげたポニーテールが綺麗なままだからどこも変じゃないよ」
七弥に七海と呼ばれたもう一人の少女は、彼女の妹。双葉高校の制服を着ている姉とは違い、七海は中学のセーラー服を纏っていた。姉の入学式が終わり次第、その足で高校に向かうためだ。
七弥は妹に結んでもらったポニーテールに触れた後、次は制服に目を移した。
白いブラウスに襟の下には赤いリボン。その上から重ねて着た紺色のブレザー。下は赤のギンガムチェックのスカートに、太ももまでの黒のソックス。そして茶色のローファー。通学用の鞄には大事な書類と筆記用具が入っている。
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