わりと剣術

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 話が見えてこない。ジャルツザッハという人の事は知っている。確かに、英雄として数えられるうちの一人。その人が考案したのがジャルツザッハ剣術。  ゴーダはそれの使い手で俺に教えてくれている。そこまでは事実。 「お前さん、ジャルツザッハのどこまで行っている?」 「え?」 「行(ぎょう)だよ。まさか15行ってことはないだろ?」  俺はしばし逡巡してから多少の謙遜を含めつつ、また実力を隠すために、 「今は、225行の途中ですけど」  と答えた。本当は、225行はひととおり終えて、その先の『千種の行』に差し掛かったところだけど。 「まあ、そうだろうな。素振りを見ていればわかる」 「わかるんですか?」 「俺も昔、225行まではかじったからな。  だがな、ルート。  そこまで出来ていて、どうして手合せの時には使わない?  俺の時もそうだ。俺以外の奴の時もそうなんだろ?  どうして力を抜く? 己の実力を隠すんだ?」 「…………」  答えられない。俺が転生者であることも、元王族であることも。  ゴーダが王族騎士の団長だったことも。すべては秘中の秘。口外すべきことではない。 ゴーダ曰く、『千種の行』をまともに使えるのは、既にハルバリデュス王国の中でもゴーダを含めた数人だけだったそうだ。それほどまでに廃れた剣法。  その使い手が再び現れて、しかも驚異的な強さを誇るとなれば噂が広がりかねない。  誰かが騎士ゴダードと結びつけるかも知れない。 「まあ、いいさ。  225行の途中だというのも信じてやる。  表面上はな。  そのかわりだ」  とガルバンさんは地面に描いた円のひとつに入った。 「ひとつ手合せしてくれないか?  あいにくと足が悪いんでな。  古来の決闘法をアレンジしてみた。  お互いこの円の中から出ることはできない。ほんとは出たら負けだが固いことはいわない。極力出ないように、ぐらいで考えてくれ。  間合いは、悪いが俺の間合いで取らせてもらった。  だが、お前の剣だって届く距離だ。  足運びに制限を加えた、ちょいと風変わりな地稽古だ」 「ガルバンさん?」
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