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ポーラさんに従って俺は、意識を火球の拡大に向けた。魔力を注ぐ。
どんどん大きくなる。直径にしてポーラさんの背丈を超える大きな炎。
「ルートさん! 上です、上ですからね。
お空に向って放ってください!!
それだけの威力だと、多分上に向けないと魔法陣の中が炎に包まれちゃいます!!」
だからそういうことはなんで先に言っておかないかなあ。
まあ、出来るからいいけど。
「トシャーナ!」
想像以上の火炎――もはやそれは火球というレベルを超えていた――が、上空へと尾を引きながら飛んでいく。
「は、ははは……」
なんか、呆けたような顔で笑っている? ポーラさん。
「どうでしょう?」
俺の問いにポーラさんは顔を2~3度ぶるぶると横に振って正気を取り戻した。
「おもったより……、もっともっと……上……………………でした……。
で、やらせておいてなんですけど、これは……、もう封印レベルですね。
桁が違いすぎます。
はっきりいって。
パルシの上級火炎呪文を見たことがありますけど、それと遜色ないレベルといってもおかしくないような……、でもパルシの魔術には想い出補正がかかってるから実際は超えているような……。でもあれって見たのは子供の頃だから…………。
とにかく!
ルートさん。わたしからの提案です。
今後は中級の攻撃魔術は封印しましょう。魔術はべつに練習すれば威力があがっていくってもんでもないです。
不器用な人は反復練習が重要ですが、ここまでの威力が出せるのなら、初級の威力を高める練習をしていれば、おのずと中級、今後覚えることになる上級魔術の威力も比例してあがっていきます。
それに、ルートさんはできるだけ詠唱を人に聞かれないようにしたほうがいいですね。
初級で中級レベルの威力が出せちゃいますから。
変に注目集めたくはないのでしょ?
これからは、呪文を唱えるときはできるだけ口を動かさずに、もにょもにょと、誰も聞こえない小さな声で言うように」
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