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「何書いてるの?」
ふと顔を上げると、アリシアと視線がぶつかった。
「ああ、マリシアへの手紙」
と俺はありのままに答える。
「ふーん」
それでアリシアは黙ってしまった。
「だめですよ! ルートさん、アリシアお嬢様の前でそんなことを口走っちゃあ!
アリシアお嬢様の嫉妬の炎が燃え広がります!」
ポーラさんがいらないことを言う。
「ポーラ! もう『お嬢様』はやめてよねって言ってるでしょ。
それに、嫉妬の炎なんて燃やしてないからっ!」
「そうですか? いえ、あいすみません。アリシア……さん」
「『さん』も要らないくらいなんだけど?」
アリシアの要望に俺も思いついたことを便乗して言う。
「俺のこともルートでいいですよ」
「はい……、だけど、ちょっとやっぱり呼び捨ては……」
「ポーラは年上なんだし、わたし達の師匠でもあるし、今は保護者なんだから」
「はい……善処します。いえ、でも多分無理だと思います。
アリシアさん、ポーラさんでご勘弁を願いたいです。
長い年月のうちに雇われ根性が身についてしまったようなのですよ。
ああ、それと嫉妬の炎の件なんですけど……」
とポーラは火に着火剤を放り込む。油を注ぐのと違って、着火剤は初期の燃焼を持続、加速させるのだ。だけど炎の大きさをむやみやたらに増大させたりはしない。
「あのね、ポーラ。ポーラが邪推したくなるのもわかるわよ。
年頃の少年少女。片やこれから同級生、また同じ屋根の下で暮らす。
片や手紙で恋を綴る遠距離恋愛。
双子の少女の恋の行方はこれからのどうなるのでしょう!?
筋書きとしてはわりとテンプレだけどね。
わたしも……多分マリシアも、そんな気持じゃないから。
ルートは弟みたいなものなのよ。
ねえ?」
と、アリシアに同意を求められて俺は素直に、
「ああ」
と答える。
ほんとは、何で弟なんだよ! 勉強から魔術から何から俺に教わっといて。それを言うなら兄貴じゃないのか? と言い返したかったが、話がややこしくなるから辞めた。
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