第1章

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 俺は、少し自分の意見をまとめる。剣術と魔術のどちらも人並み以上という自負のある俺は確かにエリート達の集団、魔術科か剣術科に入ってしまうのが良い様にも思える。  ある意味では無難。  だけど、冒険者になる時点では無難はある意味ではマイナスに働く。  埋もれてしまう。  学校に無事に入れたとして暫くは目立たないようにやっていくつもりだけど、卒業の時期を迎えるまでにはそれなりの地位に立とうと考えている。  卒業時の学校での成績が良ければ、ギルドで斡旋してもらえる仕事の質も変わるらしい。  冒険者になってしまえば、ちまちましている暇はない。さっさと旅に出て芙亜を探す。  それが今後の目的。  もちろん、剣術か魔術のどちらかを特化させてしまうのもいいが、どちらかというと俺はパーティを組まずに一人で旅をすることを考えている。  バランスよくスキルアップしていきたい。  芙亜を探す旅のイメージはどことなく一人旅が似合う。    結局まとまらないけど、なんとなく総合科志望。それにコース別に分かれて授業とかするのは、一年の時だけで、二年の途中からと三年はコースもクラスも便宜上分かれているだけというのが実態らしいし。   「ルートさん?」  思考の沼地に嵌っていた俺にポーラが声を掛けた。 「ああ、ごめん。でも、総合科からだって有名な冒険者が出たりしてるんでしょ?」 「あんまり聞いたことないですねえ」  そうなのか。じゃあ、俺がそれになってやろうじゃないか。  そんなこんなで、俺たちはあっちに立ち寄り、こっちで滞在しと入学試験前だというのにすっかり緊張感も忘れ去って気楽に旅を楽しんでいた。  あ、あとお約束としてポーラさんは馬車酔いをしやすい体質らしく――それが、乗り合い馬車を避けていた理由――、馬車の中では四六時中押し黙って、自分の中の何かと戦っていた。  こんな静かで無愛想なポーラさんを見たのは初めてだった。
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