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残念なことに通常ではありえない量の魔術を短期間に消費しつくしたアリシアは、いずれは回復はするがそれなりの時間がかかるということだった。
日常生活には支障はきたさないが、魔術の練習はしばらく出来ない。
数か月なのか数年なのかは、様子を見てみないことにはわからないという。
アリシアは自ら退学を申し出て、グヌーヴァへと帰っていった。ポーラさんとともに。
回復次第、冒険者を目指して修行を再開するという。アシリアはまだ夢を諦めたわけではない。
退学する際に学園長へと面会を申し入れていた。
確かに入学式の時に学園長は言っていた。退学する場合、それでも冒険者になりたければ自分のところに来いと。
別れの際もアリシアの顔には曇りが無かった。ちゃんと自分の進むべき新たな道を見つけたような、そんな表情。
俺は、ひとまず安心してアリシアを送り出した。
俺は、クラサスティスの別宅を引き払い、学園の所有する寮で生活する身となった。相変わらず金銭面ではクラサスティス家に支えられているが、寮生活を送りながら自立したいっぱしの大人へと成長していっていることを自覚する。
さて、発表会で学園最強を自負していたロイエルトを圧倒した俺は、生徒達から縁起の悪い通り名を、二つ名を授かることになる。
曰く、『災難の供給者』、『凶難を与えしもの』。『受難の宅配人』などなど。
無難がモットーの俺としてははなはだ不本意だったが、それだけのことをしたのだ。
アリシアの退学という事態に腹を立てた俺は、ロイエルトを敵視し続けた。
意図してやったことではないが、自然に、態度に出てしまった。
結局アリシアが模擬戦で使用していた魔杖の出所はわからなかったけど、噂は広まった。ロイエルトの計略のひとつであったと。
俺からの無言の圧力を感じ、居心地の悪さを感じたロイエルトもまたひっそりと学園を去っていった。
まあ、あれだけの実力者だ。コネだってある。いずれ冒険者となったロイエルトと顔を合わすこともあるかもしれない。その時は、過去の遺恨を洗い流して接してやるかな。奴が本気で反省しているようならば、だけれども。
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