疾風迅雷

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 卒業は間近に迫っていた。  無事に、卒業できたなら、ギルドへの推薦状が手に入る。  無試験での本登録。俺達のように仮登録で依頼を受けた経験のあるものでも、始めはルーキーランクのFからスタート。  飛び級で登録できるわけではない。  だが、学園を卒業したというだけで、実力は保証付き。  なまじ、うだつの上がらない中堅冒険者よりも、フレッシュな俺たちの方が依頼を受けやすいことが多いらしい。 「卒業したらさ、ギルドに正式に登録してもらって冒険者になるでしょ?  みんなマーフィルに残るの?」  ある時シノブが切り出した。 「あんまり深く考えてなかったけど」  とプラシ。元々ハルバリデュス生まれのプラシだが、物心付く頃には、マーフィルで住んでいるという。  家族も居るし、愛着もあるだろう。温和なプラシは都会で地味に冒険者やるのが向いているといえば向いている。 「わたしは……、できたらもっと他に行きたいと思ってます」  ミッツィも答える。彼女なりのプラン。  王都周辺では安定して依頼はあるものの、単価が安い。  人材が依頼に比べて多いからだ。若手には美味しい依頼はまわってきにくい。  辺境に行けば、掘り出し物の高額の依頼があるとかないとか。  登録したての俺たちのランクでは受けられないが、マーカサス諸島のダンジョン、魔塔めぐりなんていうお宝ゲットの期待値大の冒険クエストだってある。
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