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闘技場の中央で横たわるアリシア。
「アリシアっ!」
俺はすぐさま駆け寄った。救護班も駆けつけてくる。
そして観客席から飛び出してくる一人の黒いローブ。
ポーラさん!?
「これは……明らかに魔力の使いすぎです!
手当ての仕方はわかりますよね?
魔法薬の備蓄はありますか?」
手際よく指示を飛ばすポーラさん。
担架が運び込まれてアシリアの身体が乗せられる。
そのまま運び出されようと担架が持ち上げられた時、アリシアの手から魔杖が零れ落ちた。
今朝ポーラさんが渡していたのとは違う。だけど学園で一般的に使われているものとも違う。
高級そうな魔杖。
拾い上げたポーラさんの顔が曇る。
「わたしは、アリシアさんについていきます。
大丈夫です。単なる魔力の使いすぎによる疲労、貧血みたいなものです。
すぐに意識を取り戻すはずです。
ルートさんは試合に専念してください。このまま続く……のでしたらですけど……」
そこまで言ってポーラさんは俺に耳打ちした。
「アリシアさんの使っていた魔杖……。普通じゃありません。
術者の魔力を極限まで使用して枯渇させるような……。
通常の経路じゃ手に入らないものです。
ましてや、魔術修行中の若者が使うものじゃありません。
気をつけてください。この発表会……、影でいろんな思惑が渦巻いているかも……です」
不安を煽るポーラさんだったが、アリシアの容態については保証してくれた。
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