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結局、アリシアの急変による中断はあったものの、発表会はそのまま継続されることになった。
闘技場の中央で対峙するロイエルトと俺。
ロイエルトが俺にだけ聞こえる声でささやいた。
「そこそこの魔術が使えるらしいから選手に選抜してみたんだよ。
君とも関係が深いと聞いてね。なに落ちこぼれの総合科相手だ。魔術戦ぐらいは楽に勝てるだろう。実際そうなったことだしな。
上級魔術も使えるってことだったから、総合戦で君の戦力を少しくらい削いでくれるかと期待していたんだが。
期待はずれだ。
あれだけの魔術で魔力が枯渇するなんてね。
せっかく手にした魔杖を使いこなせなんて……」
「お前! まさかお前がアリシアにあの魔杖を!?」
「僕は何にもしてないさ。たまたま紛れてたんだろう。
学園側の管理も杜撰だな。
僕が、進級して生徒会に所属した暁には是正対象だ」
こいつ……、口ではこんなことを言っているが……。
確信犯だ。有力な貴族であることを傘に着て、背後でいろいろな糸を引いている。
「てめえ、ゆるさねえ!」
「恨むんなら無能な運営を恨みなよ。
僕を責めるのはお門違いだ。
まあ、これから僕達は戦うんだ。
ハンデは一切無し。もっとも、君の精神状態が平常を保てるのかどうかが心配なところだけど?
大丈夫? 君の大事な友人なんだろ?
動揺して本来の力が出せないなんていい訳は後から聞きたくないからね」
俺の怒りは沸点に達した。
ロイエルトは、アリシアを出汁に俺の動揺を誘っている。二段構えの作戦か?
アリシアの魔力が持って俺に最高の魔術――上級魔術――をかまして俺の消耗を誘うのもあり。
失敗して俺の動揺を誘うのもあり。
えげつないことを平気でやる。腐った人間だ。
俺は、思わずロイエルトに掴みかかろうとした。
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