第1章

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するとどこからともなく、先程のアナウンスと同じ声でボタンの横から声が聞こえた。ヨウはボタンに気を取られ、気づいていなかったのだが、ボタンの横には固定マイクのようなものが置かれていた。 「質問をすることができます。ただし、ひとつのボタンを押すことで質問できるのは、ひとつの質問だけです。しっかりとお考えになり、自分に有益となるような質問をしてください。」 そういうとアナウンスは終わった。今回のアナウンスは先程のゲーム開始のアナウンスとは違い、また、学校で全校生徒へ連絡を告げる全体放送のようなものととも異なっていた。ボタンの前にいるヨウ本人、ヨウの近くに人がいればようやくその人たちまで聞こえるかどうかくらいの音量だった。 「おい! ここに食いもんとかはねーのかよっ! こんなとこに連れてきやがって! ただじゃ、おかねーからな! このヨウさんをなめてんじゃねーぞっ!! カレーもってこいやっ、コラアッ!! 牛乳もってこいや、コラアッ!!」 質問といえば、質問をヨウはしたのだが、怒りが優先し、途中からは喧嘩腰になってしまったが、それに構わず、アナウンスが流れた。 「食べ物はあるともないとも言えます。ただ、あなたがこれまで食べてきた食べ物のイメージとは違い、自分で考え、知恵を絞らないといけません。例えば、レンジでチンできるような親切な状態でおかれているとも、冷めてはいるもののそれさえ我慢すれば、食べることができるという感覚とも違います。回答は以上です。あなた様のご健闘を心よりお祈りします。」 そこで、アナウンスは途切れた。 「はあ?これ回答になっているのかよ!ふざけやがって! おいっ! おいっ!」 ヨウは目の前のボタンを何度も押し、マイクに向かって叫んだが、応答はなかった。どうやら、ほんとうにボタンひとつにつき、ひとつの質問しかできないことを理解した。つまり、ゲーム開始のときのアナウンスで流れていたことで、この部分は本当であることが確認できた。ただ、ヨウ自身、質問の回答に怒りを覚えていたが、しばしの時間が経過し、落ち着いてくると受け入れがたい現状にいることに恐怖と絶望が募るばかりであったー。
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