第1章

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「あー、さっきから叫んでばっかだから、喉かわきまくりだぜー、なんか、ねーかなー」 ヨウはそのまま辺りを見渡しながら歩いていると、大きな水たまりがあることに気づいた。ヨウは背に腹はかえられないことはわかっていたのだが、こんな水を飲んで何かの菌にあたり、腹でも壊した日には、痛恨の一撃である。しかし、そろそろ最低でも水分くらいは補給しないと、喉がカラカラなうえに、体力的にもまずい。そこで、まず、ヨウはその水たまりに近づき、その水をしげしげと見た。 その水はどぶ水というわけではなく、おそらく雨でできた水であろうとヨウは推測した。そこの部分のアスファルトがくぼんでいるうえに吸水性が悪いのだろう。または、くぼんでいるからこそ、周りより多くの雨がたまり、吸水性が悪くなっているのかもしれない。そして、幸いにも水の奥にこそ、不純物が沈んでおり、そこ以外はとてもキレイだった。なので、ヨウはその奥に沈んでいる不純物が再び水にかきまざり、表面に浮かんでこないよう気をつけながら、水を飲んだ。 極限に近かった喉の渇きを潤してくれる水はいままで味わったことがないくらいうまかった。だが、限られている水の量だったので、一気に飲まず、一口ひとくち、渇ききった喉をうるおすように、疲れきった体と精神にエネルギーを蓄えるように、しっかりと飲んだ。
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