第1章

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ヨウは廃墟のなかから少し、外へ出て廃墟沿いに歩いていった。 「ゲームスタートとか言っていたくせに、人ひとりいねーじゃねーかよ。被害者チームとか加害者チームとかじゃなく、まさか俺ひとりしかいないんじゃねーのか?」 とはいうものの、とりあえず歩いて先へ進むいまいる場所の大体の地図を把握し、頭にいれておく必要があったので、どんどん歩いていった。そのときだった。うしろで何か物音がした。 「何だ。猫か。」 猫かははっきりしなかったものの、猫でなくても子犬程度の大きさの動物が視界からかすかに去っていくのが分かった。 「それにしても、こんなとこに動物いるんだな。やつら、一体何食ってるんだろ。アリとか食ってるのかな?まあ、いいや」 大したことではなかったので、ヨウは気にせずどんどん進んでいった。すると、数百メートル先に今度は動物でない何かがみえた。そっと物陰にかくれ、目を凝らした。 「ひ、人だ!」 その人影は何かを追っているようだった。物陰に隠れながら、蛇のように軽いステップを踏みながら、着実に前へ前へと進んでいる。背中のほうには、洋服とズボンの間に何かをはさんでいるような膨らみがあった。ヨウは、その人影に妙な不気味さを覚えたが、やっと見つけた自分以外の人間なので、いまよりももうすこしだけ、その人影より速く動き、その人影に気づかれぬよう距離をつめた。 その人影に気づかれぬようヨウは、数百メートルあった距離を目測で三百メートルぐらいまでつめた。幸いにも廃墟だらけだったので、隠れながら進めるところは思った以上にたくさんあり、スムーズにこの距離までいくことができた。あの距離から廃墟沿いの日陰も影響し、男なのか女なのかはわからなかったが、この距離からその人影をみると、背は高くないが、ひょろ長い四十後半~五十半ばぐらいであろう年齢の男であることが分かった。そして、もうひとつ分かったことがある。先程何かわからなかったその男の背中の膨らみは、バットか何かの武器になるであろうものを隠しているだろうことが分かった。あと、ヨウはこの男をどこかで見たような気がすると思いつつも、そこまで気に止めなかった。そして、その男はヨウにあとをつけられていることも知らず、何かを狙うように気持ち悪い動きをしながら、後ろを振り返ることなく、前へと進んでいった。
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