第1章

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野口翔子は、外へ出ると周りの光景の気持ち悪さに吐き気を覚えた。 「何、これ…」 眼前に広がっている廃墟だらけの場所は、絶望を感じさせるには十分すぎるほどだった。 「一体、ここはどこ?」 日本にこんな不気味なところがあるのだろうか。翔子はたしか以前、軍艦島という廃墟の島があったことを思い出した。ただ、おそらくその島ではないだろう。いきなり、その島に目覚めた瞬間からいるなんて考えられない。でも、考えられない現象はすでに目の前で起こっている。すべての可能性を排除することはできなかった。 翔子は、自分の過去と向き合い、「被害者チーム」にいることが分かった。しかし、それは確定ではなく、まだ推測の範囲である。自分の過去としっかり向き合ったつもりではあるが、そこに主観や都合のいい解釈があったのであれば、本当は「加害者チーム」に入っているかもしれないという恐怖をぬぐいさることはできなかった。ただ、そこを考えすぎてもどうしようもない。過去としっかり向き合い、翔子が「被害者チーム」と判断したのだから、翔子自身、己を信じて前へ進むしかなかった。 日差しは出ているのに、廃墟だらけでどこか薄暗い雰囲気だったが、どうにか翔子は、前へ前へと足を出していった。人の気配はまったく感じられず、廃墟沿いの通りはなにか、表現しがたい特有のにおいが立ち込めていた。それはけしていいにおいなどではなかった。 それにしても喉が渇いた。ここに安全で気持ちがやすらぐ場所があるはずなかったので、廃墟のなかにはいり、人目のつかないところへ翔子は入っていった。そして、人目のつかない場所でありながら、自分からはある程度、周りを見渡せるところを発見した。そこで、翔子は一休みすることにした。
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