第1章

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翔子はベランダへ出ると、まず、ベランダから辺りを見回してみた。すると、 見渡すかぎり、廃墟と廃墟の間に道はあるものの、車が通れるような道ではないこと。 いま翔子がいる廃墟と同じ高さの廃墟がひとつ、ふたつでなく、たくさんあること。 断言はできないがおそらく一列に廃墟は立ち並び、廃墟→道→廃墟→道→廃墟→道というように規則性があったこと。 綺麗な形の配列で廃墟が建ち並んでいることから、営業用なのか、公共用なのか分からないが、何らかの施設であっただろうこと。 が分かった。あくまでも翔子の推理ではあるが、周りの風景がどうなっているかだけを把握するのとしないのとでは気分的にも大きく違う。それを考えると、しばらくの間、この部屋にとどまり、ベランダから周りを見渡したことは大正解だと思った。 それにしても、このようなところへいつの間にか連れてこられ、奇妙なゲームにも巻き込まれたのはもちろん、この島のような場所の廃墟の建ち並びをみると、さらに謎は深まるばかりだった。そのときだった。ベランダから下の方を見ていると何やら人影のようなものが動いているのが確認できた。 (人だ!人がいる!!) その瞬間、翔子はアナウンスで説明されたことを思い出した。 「加害者チーム」 「被害者チーム」 半信半疑ではあったが、本当に目の前で殺人が起こりそうな気がしてたまらなかった。でも、アナウンスではゲーム表現していたが、本当に「被害者チーム」が「加害者チーム」を殺すようなことになれば、それはただの殺人にしかならない。ゲームはゲームでも、娯楽としてのゲームでなく、現実の殺人ゲームである。考えたくもないことだ。 目の前で想像していることが起こらないよう祈りつつ、翔子はその人影に気づかれぬよう、そっとベランダからその人影を見つめたー。
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