第1章

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翔子が最初に目にした人影。それは、よく目を凝らしてみると、ヒョロとしている中年の男だった。その中年の男は奇妙な動きをしながら、何か目的があるように前方へと進んでいた。 次に翔子が目にした人影は、最初に目にした中年の男に気づかれぬよう物陰に隠れつつ、一定距離を保ちながら、あとを追っていく三十代の男だった。翔子は、あるイヤな予感がした。 中年の男の前方には、特に誰もいる気配はない。ただ、時折、興奮したように翔子の場所にいても聞こえる奇声は気色が悪かった。それは、その中年男のあとをおっている三十代の男も同じようで、奇声を聞くたび、ビクッ という驚いた反応をしていた。 中年男とそのあとを追う男は、二階のベランダから見ている翔子に気づく様子はなかった。しかし、何の拍子で二階をみるか分からないので、翔子はベランダからできるだけ頭がでないようにして、二人の様子を観察していた。そのときだった。中年男が、誰かをみつけたのである。いつの間にか中年男の前方に人がいることを、翔子のところからも確認することができた。
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