第1章

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(どうなっているんだよ) 纓田智也は途方に暮れながら、廃墟のなかをひたすら歩いていた。スマホを取り出し、メール・電話・ネットと試してみたが、どれも繋がらない。ただ、ネットなどの接続を要しないカメラ機能のアプリなどはしっかり作動することは確認できた。しかし、この廃墟ではスマホは充電することなどできるはずがない。そもそも電気回線など昔は通っていたにせよ、いまはもう使われていないのは明らかだろう。この廃墟を見渡した、智也はそう思った。 (とりあえず、ゲームってのは開始している。俺は加害者チームなんだから、いきなり刺されたりしないように後ろにも気をつけないと…) もちろん、すべてを智也は信じたわけではない。しかし、智也のようになにがなんだかわからないうちに、暗闇に閉じ込められ、ゲームを開始するという説明のアナウンスが流れたと思ったら、明かりがつき、大きな部屋にいる。そして、その部屋のドアから外へ出たら、人の気配がしない夜にでもなれば幽霊でも出そうな、建ち並ぶ廃墟ー。何人このゲームとやらに参加させられているか分からないが 「被害者チームは加害者チームを殺す」 という条件をうのみにしているやつはいるかもしれない。まあ、知り合いでもなければ、その人が加害者チームなのか、被害者チームなのかを判断する材料はないだろう。それでも、このゲームの条件を聞き、アナウンスでゲームの概要が一回しか説明されなかったのだから、異常者でもいれば「人を殺せる」という快楽にとらわれているかもしれないー。そんな微かな不安が智也にはあった。 「でも、そんなことにそうそうなりはしないか」 少し、自分を落ち着かせるように、そして、自分を少しでもそう説得するように、自分に聞こえるくらいの声を出し、智也は、どんどん前へ前へと歩いていったー。
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