第1章

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その違和感のある写真をずっと眺めていたが、やはりその違和感の正体が何か分からない。 「そうだ! 何で気付かなかったんだ!」 智也は、ようやく気付いた。補足しておくと、智也が気付いたのは違和感の正体ではない。違和感がある写真の違和感を確かめるために、その写真をズームできることに気付いたのである。普段、使いなれているはずのスマホであるが、電池容量を気にしていたことやこの異常ともいえる状況で、いつもならすぐに思いつくことが思いつかなかったりするものである。智也もその例外ではなかった。 智也は、その写真をズームしてみた。まずは写真中央、左上、左下、右上、右下と順番に、見落としがないようズームし、見ていった。一見すると、くまなくズームしても何ら異常もなく、普通の写真だ。しかし、どうもおかしい。智也はそう感じ、もう一度先程の順番のようにその写真をくまなく、ズームした。 二度目のズームをしていくと、智也はようやく気付いた。もちろん、今度こそズームできることに気付いたという機能面ではない。その違和感の正体である。おそらくズームしないと気付づかなかったであろう、遠くを写した部分。ズームするとよく分かった。廃墟の柱の隠れるよう顔を半分出し、じっとこちらがわを見ている男の顔がー。
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