第1章

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印南勝也は、拾った鉄パイプは万が一、いまあとをつけている男に気がつかれた場合に備え、背中のほうに隠していた。 いきなり、目にする男が鉄パイプを持っていたら、明らかに警戒するか、自分をみた瞬間にげてしまうだろうからだ。 勝也がいまあとをつけている男は高校生ぐらいだろう。制服姿なので、もしかしたら中学生かもしれないが、そんなことはどうでもよかった。なぜなら、 「僕は被害者チームなんだから、一日目はやりたい放題だ。被害者チームは、被害者チームを殺してはならないという説明はなかった。」 「もし、あの高校生らしきボーイが加害者チームであっても、一日目なんだから被害者チームの僕に反撃はできない」 と勝也は考えていたからだ。勝也は、神になったような気分だった。そのとき、勝也は、高校生らしき少年こと、勝也いわく「ボーイ」が何やら、地べたに座り、ケータイらしきものをいじりだしたいるのに気付いた。勝也は、スマホではなく、ケータイを使っているため、音がでないカメラのような機能があることは知らない。なので、ボーイがケータイで後ろやら前やら、右やら左やら動かしているとき写真を撮っていること、自分がじつは偶然にもその写真に写ってしまっていることに気づいてすらなかった。むしろ、 (あのボーイめ、気持ち悪い行動しやがって) と思っていた程度である。そのボーイは、地べたに座り、スマホをみて何かに気付いたようで 「あっ!」 と声を出していた。その瞬間、ボーイはキョロキョロ辺りを見渡したので、柱の影に勝也は隠れた。 「もう、いいかな」 と思い、勝也が軽く柱からボーイの方向を見ると、ボーイもこちらの方を見ていた。とうとう、ボーイと目があった。このゲームがはじまり、一方はその存在に気づいても他方は気づかず、目線が合うことは一切なかった。だが、いまは違う。印南勝也とボーイの目があった。このゲームはじまって最初の「遭遇」である。 高校生「纓田智也」 中小企業社長「印南勝也」 両者ご対面。
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