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「おー。おー。そうかーそうかー。んぱっ。智也くんは被害者チームかー。あ。智也くんも被害者チームかー。安心安心。ホッとしたよ。」
勝也はそう言うと、智也が警戒しない程度にゆっくりゆっくりと距離をつめていった。
「じゃあ、僕も智也くんも被害者チームということは、一緒に行動したほうがいいんじゃないかな。こんなところで一人だと心細い。日があるうちのいまはまだいいけど、日が沈んで夜になったら、こんな場所で一人だったらおかしくなるかもしれない。だから、一緒に行動したほうがいいと僕は思うんだ。智也くんはそれでどう?」
正直、智也はこのオヤジと行動するのはイヤだった。でも、このオヤジが言っているのはもっともで、日が暮れて夜になったら心細い。まあ、智也が本当は加害者チームであること、このオヤジにに分かりようがない。このオヤジが智也の過去など知りえることなど、不可能であった。
それを考えたら、一緒に行動したほうが無難と思った。しかし、勝也の首の後ろ側に目がいった。そこには、おそらく棒やパイプを背中に隠しているようにみえた。
「勝也さん、その背中にあるもの何ですか?」
「これねー。えーと。鉄パイプだよ。」
「それで、何するつもりなんっすか?」
「智也くんを痛めつける。ぽっ。いくよー。」
いきなり、勝也は地面をなめるように、智也を追いかけてきた。智也は全速力で逃げた。逃げながら、勝也に智也は質問した。
「か、勝也さん! 俺、被害者チームなんですよ! 仲間じゃないですか! 何で、パイプなんか持って、俺を追いかけるんっすかぁっ!!」
智也は、勝也の返事を待ったが、返事はない。背後から聞こえくるのは、まるで部活の掛け声のように気合いを入れながら
「ぽっ。ぽっ。ぽっ。」
という勝也の掛け声だけだったー。
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