第1章

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アナウンス終了と同時に、各々の部屋のドアが開かれた-。 纓田智也はドアが開くと同時に飛び出したー。 すると、目の前には軍艦島を思わせるような廃墟が周りには広がっていた。しかし、周囲を見渡しても人がいる気配はない。だが、よくよく考えてみるとさっきの説明を聞くかぎり、智也は不用意に飛び出してしまい、過ぎたのかもしれないと後悔した。なぜなら、智也自身過去を振り返り、自分が加害者チームであろうことは容易に推測できたからだ。 智也には、中学時代、怪童あつしという同級生を執拗にいじめていたことがある。そして、それ以外は誰をいじめることも、親に反抗することも、先生に反抗することも八つ当たりなどもすることはなかった。つまり、自分が被害者になった記憶はない。知らずにあったとしても、それは記憶にない程度の被害であり、大したことはないレベルだろう。ますます、智也は自分が「加害者チーム」に属しているだろうことに確信を得ていた。 自分が「加害者チーム」であることが分かった以上、迂闊に行動することはできない。幸い、ここは廃墟だらけで隠れる場所はたくさんある。智也は「加害者チーム」なので、一日目は「被害者チーム」から狙われる一方で反撃することができない。なので、丸一日は誰にも見つからずに隠れている必要がある。その時、智也はひとつの疑問が浮かんだ。 周りを見渡し、周囲の様子をよく観察してみると、いまは朝または昼であろうことが分かった。日差しの照り具合から、おそらく朝ではないだろうか。もちろん、智也の感覚なので確信はないのだが、日差しが出ているのだから、けして夜ではない。それでは、丸一日経過し、二日目に入るタイミングは、自分の感覚で判断するしかないのだろうか。はたまた、先程のように 「二日目に突入しました」 などというアナウンスが流れるのだろうか。とりあえず、いま出来るのは、次の日の朝が来るまで、どこかに身を潜め、待つしかない。押したら質問ができるボタンを探すこともできはするだろうが、すぐにそのボタンが見つかることはないだろうし、何より危険を犯してまで、ボタンを探し、この質問をするメリットはない。腹が減ったうえに、尿意までもよおしてきたが、我慢できるところまで我慢し、智也はじっと身を潜めることを決意したー。
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