第1章

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印南勝也はドアが開くと、そのドアの向こうに出ていいのか迷った。もちろん、この部屋の中だけにいては、何も進展しないのは目に見えている。しかし、それ以上にゲームの内容を聞いて恐ろしくてたまらなかった。 勝也は、中小企業社長であるが、気に入った女子社員がいると、すぐに目をつけ、飲みに誘い、それを一度でも断られると、その社員に嫌がらせをし、その嫌がらせを受けた社員は例外なく、退職を余儀なくされた。 肉体的嫌がらせでなく、精神的嫌がらせ執拗に繰り返し、そのターゲットになった者は、それに耐えきれなかったからだ。 そして、もうひとつの理由としてはそこそこ名の知れた中小企業であるには違いないが、社長である勝也が考えているほど、そのブランド力もカリスマ性もなかったので、社員は辞めるのを躊躇しなかったのである。しかし、勝也は勘違いしている部分は自らの会社のブランド力を過信していただけでなく、いま、この場においても致命的な勘違いをしていた。 勝也はまず、ドアから出る前に考えてみた。自分は「加害者チーム」なのか、それとも「被害者チーム」なのかを。 学生時代を振り返ってみると、いじめられたことも、いじめたこともなく、普通の学生生活だったと感じている。なので、学生時代から自分が「加害者チーム」なのか、それとも「被害者チーム」なのか、を判別するのは勝也にとって不可能だった。
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