第1章

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野口翔子はアナウンスが終了し、部屋のドアが開くと同時にドアの外へ出た。辺りを見回すと、廃墟だらけで、とても恐ろしく泣き出したいくらいだった。 しっかりとゲームのルールは聞いた。でも、なんで自分がこんな目にあわないといけないのか不思議でたまらなかった。そして、人を殺すとか人が殺されるとか、そんなゲームを楽しんでやるようなアナウンスが許せなかった。しかも、ゲームはゲームでもリアリティー番組のゲームであり、たぶん、これから凄惨な殺しあいが起きるだろうことは翔子自身予想できた。でも、翔子はその殺しあいに加わるつもりは毛頭ない。殺されるのも、殺すのもまっぴらごめんだ。ただ、生き残るためには、自分が「被害者チーム」なのか、「加害者チーム」なのか、をしっかり把握しておく必要はあった。 翔子は小さい頃から今に至るまでの自分と冷静に向き合ってみた。 翔子は小さい頃から、小学、中学、高校、大学と他人とのトラブルはなく、自分がこんな加害者となった覚えも被害者となった覚えもない。そして、職場においても特に嫌なことはなく、そこにおいても加害者か、被害者かを見分ける術は見いだせない。次に翔子自身、過去の見方を変えてみることにした。 翔子は、人一倍正義感が強かった。悪いことは許せない性格だった。ただ、正義感が人一倍強くても、それを表面に出すことができるかというとそうとも限らない。そして、翔子は人一倍正義感が強いにも関わらず、それを表面に出すことできなかった。なので、 「あのとき私が注意できたら…」 と寝床につくとき、後悔することも多かった。また、翔子にとって、忘れられない出来事があった。そう。それは二年前のあの日の出来事である。親友の由美の家庭が突如壊れ、由美が姿を消し、連絡がとれなくなったとき、翔子は夜も寝れなかった。時間がその苦しみを少しずつ、和らげてくれたが、由美と再会する瞬間までその苦しみから解放されることはなかった。由美と再会し、由美の笑顔を見たとき、その苦しみからようやく解放されたが、二年間の心労は凄まじかった。それを考えたとき、翔子は自分が「被害者チーム」にいるだろうことがようやく分かった。翔子はそれが分かると、静かに一歩踏み出したー。
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