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プロローグ
オレンジ色の夕日が誰も居ないグランドを照らし、静まり返った廊下に二人の足音と声が響いていた。
「ヤマタツが色々言うから委員会が遅くなっちゃったじゃない」
「だってさ、放送委員と新聞委員でおもしろい事やろうって言うからさ。なんか熱くなっちゃったんだよ。ゆなは、どう思うんだよ?」
サイドテールに結ばれた髪の毛を弄りながら、後ろを歩く同じクラスの男子、ヤマタツに視線を向けた。
「確かに面白いと思う。皆、学校の七不思議とか好きそうだし」
後ろでそうだろうと楽しそうに騒ぐヤマタツを尻目にゆなは話を続けた。
「でもお昼のテレビ放送の時間に七不思議の検証映像を流すのは低学年の子達が可哀相だわ。きっと怖がってお昼食べれなくなっちゃう」
「そっか。それはまずいよな」
後ろでうーんと悩みながら歩くヤマタツの声を聞きながら、ゆなは口を開いた。
「まだ放送で怖い話を流すぐらいなら大丈夫かもしれないわよね」
ゆなが歩みを止め、目の前の階段を降りずにヤマタツの方に振り返った。
「七不思議検証は放送委員と新聞委員で一緒に行こうって決めたし、とりあえずそれをやってから、先生と相談しながら先考えようぜ」
そうね。とゆなが言うと二人は並んでゆっくりと階段を降り始めた。
「そういえばゆなは、七不思議全部言えるか?」
「四つは知ってるわ」
「じゃぁ言ってみろよ」
ゆなは指を折り、数を数えた。
「えっと……。屋上に続く階段は夜中の零時に数えると十三段あるって話と音楽室のピアノが深夜二時に勝手に鳴りだす。あと三階の女子トイレの三番目には花子さんがいる」
ヤマタツは踊り場からゆっくり降りてくるゆなを見ながらニヤニヤと笑った。
ゆなは踊り場に降りると壁を指差した。
「昔ここに取り付けられていた大きな鏡が四時四十四分になると現れて鏡の中に引きずりこまれる」
「おぉ! すげぇな」
「七不思議特集するんだからこれくらいは知ってるわよ。でもあと三つは知らない。ヤマタツは知ってる?」
ヤマタツは満面の笑みをゆなに向けた。
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