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全部言っていいのか? 七つ知ったら死ぬかもしれねーぞ。とゆなを脅した。ゆなは呆れた顔をしながら、ヤマタツが全部知ってて、死なないんだから死ぬわけないじゃないと言って、ゆなは残りの階段を駆け足で降りて行った。
ヤマタツはそれもそうだなと言いながら、残りの階段をジャンプして降りた。
「でさ、残りの三つの七不思議ってのが一番怖いんだぜ」
「一番怖い?」
ゆなは首を傾げた。
「三つの七不思議は物語が繋がってるんだ。まずは昇降口に一番近い教室は使われていない教室ではなくて開かずの間なんだ。その扉が開いたとき、かくれんぼのあいちゃんがやってきて遊ぼうって言うんだ。あいちゃんに捕まったらもうこの世には戻れない。そして、あいちゃんを成仏させるためには開かずの間の壁に埋まっている、あいちゃんの死体を取り出してあげて、成仏させるしかないんだってさ」
ペラペラと話すヤマタツの声は別に怖がらせようとしているわけではない。でもゆなは寒気を感じ、体を摩った。
「確かに一番怖い。でも開かずの間でしょ? 先生鍵貸してくれるのかな? 検証なんて出来るのかしら」
「まぁ、その辺はこれから色々練っていくとして――」
ヤマタツが急にあっと声を上げた。ゆなは何事かと思い、体をビクつかせた。
体操着を持って帰るの忘れたから教室に取りに行くと言い出した。ゆなは先に帰ってていいからなと言われ、ヤマタツは来た道を戻っていったが、ゆなはどうにも一人で帰る気持ちになれなかった。
七不思議は単なる噂。だからと言って、怖くないわけがない。日が落ち始め、暗くなってきた廊下に一人で待たされるのも怖かった。昇降口で靴を履き替えて、外で待っていた方が怖くないだろうか。
ゆなは両腕を摩りながらどうするべきか、その場を行ったり来たりしながら考えていた。
「もぉ。ヤマタツが私を置いて教室に戻っちゃうから。私だって一人になったら怖いのに」
ゆなはボソボソと独り言を言うと、窓ガラスが音をたてて揺れた。
ゆなは声に鳴らない声を発し、風のせい。風のせいと自分に言い聞かせながらまたその場を行ったり来たりしていた。
だが突然背後に人の気配を感じた。
「ヤマタツ戻ってくるの早かったじゃない」
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