フラワーガールの恋

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奉仕活動で中国系の家族と出くわすと、彼らの会話がまったくわからなくなって、アナは一人取り残された気分になる。 そんな時とか、しばらく会えなくて寂しい時は、いくら平気なふりをしてもアレックスにはわかってしまうようだ。 「アナ、いつものとこ、寄る?」 それが合図。 学校からの帰り道、少し遠回りをして公園に寄るのだ。 そして公園の真ん中にある噴水の回りにあるベンチにふたりで腰を下ろす。 そこで時間の許す限り、ふたりでいろいろなことをおしゃべりするのだ。 「ちょっと待ってて」 公園の外の道路の斜め向かいには、アイスクリーム屋さんがあった。 夏はもちろん今のような晩秋や冬でもここでずっと営業をしてきて、もう40年くらいになると聞いている。 寒いせいか公園にはほとんど人の姿がない。 けれど噴水の向こう側では手を握り合って何かを囁きあっている、やはり高校生くらいのカップルがいた。 まわりの景色などまるで目に入らないのだろう。 男の子の息がくすぐったいのか、女の子が 「やだー」 と軽い笑い声を立てている。 そんな二人のそばに一人で座っていると、どうにも居心地がよろしくない。 まだかな、と落ち着かないでいると、「お待たせ」 と待ち望んだ声が上から降ってきた。
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