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クリスマスには約束どおりアレックスが会いに来てくれ、翌年の夏にはアナが親戚を訪ねがてら、カルフォルニアまで彼に会いに行った。
アレックスは車を借りて空港まで迎えに来てくれ、その足でまず彼の通う大学や、よく行く店などを案内してくれた。
「こっちって1年中気候がいいだろ? 過ごしやすくていいけど、観光客に囲まれていると時々真面目に勉強するのがあほらしくなってくるよな」
故郷にいたときよりなんだか生き生きしている、、、。
隣にたっていろいとろ説明してくれるアレックスをアナはまぶしそうに見つめた。
私がいなくても? という疑問は胸の奥にしまった。
明後日は家に戻るという金曜日の夜。
アレックスはアナを観光地ラ・ホヤに連れて行った。
宝石というその名の通り、1年中椰子の木が風に揺れる美しいビーチがある名所だ。
そのビーチを見おろせるベンチに、二人は並んで座った。
目の前には天使が瓶を持つ噴水ではなく、大海原が拡がっていて夕方の陽にきらきらしている。
8月の今でも、最高気温は25度くらいにしかならない。
海の湿り気を含んだ風が二人の頬を撫でていく。
「アナ」 アレックスが唐突に口を開いた。
「君と離れていたこの1年、長かったけれど、終わってみればあっという間だったという感じもする」
「うん」
「あと1年だから」
まるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、アレックスは自分のひざの上に行儀よく置いていたアナの手を、上から包みこむように握り締めた。
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