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「うん、この調子でがんばりなさい」
この前受けたSATの結果を見ながら、進路指導の先生はアナに微笑みかけた。
よかった。あと、もう少しだ。
年内には願書を提出しなければいけない。
「あら、あなた、お家から受付に電話で伝言が入ったわよ」
家に帰ろうとすると、呼び止められた。メモを見ると、妹のエリカからだ。
(なんだろう)
すぐ家に電話するが、誰も出ない。嫌な予感がした。
帰宅すると家は真っ暗だった。最近父も時間を限ってではあるが仕事に復帰したから、家に誰もいないのはめずらしいことではない。
けれど、洋服の入ったクローゼットの引き出しがいくつも開けっ放しになっていた。どうしたんだろう。
ルルルル、、、
しんと静まり返った家の中で突然電話が鳴ったので、それでなくても不安にかられていたアナは飛び上がりそうになった。
「は、はい」
「あ、お姉ちゃん!?」
エリカだった。声から焦りがにじみ出ている。
「どうしたの」
「ママが、ママが倒れた。今勤務先の病院にいるの」
「ええっ、、、!」
脳梗塞だった。知らせを聞いて、エリカは入院になるだろうと、とりあえず必要そうな荷物をまとめて家を飛び出したらしい。
アナの母は肥満体でもなければ高血圧でもなかった。リスクファクターが見つからない。まったく予想外のことだった。
幸いに勤務先が病院ですぐに対処できたため、一命は取りとめた。でも経過しだいだが、体の一部に麻痺が残る可能性がかなり濃厚だという。
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