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父も健康に問題を抱えており、母のこの先もわからず、妹はまだ中学生。アナに選択の余地はなかった。
「そっちに行けなくなっちゃった、、、」
母のことを説明し、そう最後に付け加えた後は、もう言葉が続けられなかった。
「だいじょうぶだから、アナ、僕ができる限りそちらに行くから。君は君の家族の事を優先して」
ありがとう、という思いと、あなたはそれで平気なの? という思いと。
ぐちゃぐちゃな感情に苛まれながら、アナは電話口で泣き続けた。
***
アナが家から通える大学に入ってからも、二人はメールと電話でやりとりを続けた。
時々アレックスが語るカルフォルニアでの生活の様子が、遠い世界のように思えた。
四季がはっきりあり、冬は厳しくてしばしば厚い雪におおわれるこの町と、1年中リゾートのような気候の彼の住む町。
アレックスから聞く大学で行われるイベントは、野外コンサートだったり夜通しのパーティだったりと、いかにも楽しそうだ。
開放的な環境で会う女の子たちは、あの暖かい気候で、皆肌を出した魅力的な格好をしているのではないだろうか。
考え出すときりがない。
(気にしない、気にしない、、、)
アナは自分に言い聞かせた。
彼は夏と冬に会いに来てくれるのだから、大丈夫だと。
そう、アレックスは夏休みとクリスマス休暇には戻ってきて、ほんの数日間ではあったが、二人はその間は会えなかった時間を埋め尽くそうと、できる限り一緒に過ごすようにしていた。
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