フラワーガールの恋

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*** 「シミはだいぶ薄くなったけど、まだ所々はっきりとわかるね」 湿らせた布地で汚れたところを叩いていた伯父さんがため息をついた。 「困ったわ、この子フラワーガールなのに。誰か代わりにやれる小さな女の子いる?」 「え、やだぁ!」 今日は大好きな従姉妹の結婚式なのに。 泣き止んだはずのアナの目には、また見る見るうちに涙が溜まっていく。 「へぇ、君はフラワーガールなんだ? 僕はリングベアラー(指輪を運ぶ男の子)だよ」 さっきアナを助けおこした男の子は言った。 「僕の名前はアレックス。君はアナっていうんだね?」 「うん」 優しそうなお兄ちゃんだな、とアナは思った。 大人たちはまだフラワーガールの件をどうしたものか話し合っている。 「ねぇ」 アレックスは大人たちのほうを見て言った。 「花いっぱい余ってるじゃない。それをパパたちが胸に刺しているように、アナの服に刺してみたら?」 「安全ピンでか?」 「うまくいくかなあ」 大人たちは懐疑的だったが、アレックスの父親が息子とアナを見つめながら、うなづいた。 「やってみる価値があるんじゃないか」 試行錯誤した結果、花弁が大きくて比較的落ちにくい蘭の花にピンをつけて、アナのドレスのあちこちにつけることになった。 「ちょっとあの子のドレス、生花がついてるのね!」 「ほんとお花で一杯の結婚式ね。素敵だわ」 このウェディングは後々まで大人達の口に上る印象的な式になった。
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