フラワーガールの恋

43/102

302人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「電話あったよー」 事務所に戻ったアレックスに、中国人アシスタントが告げた。 「誰?」 「知らない。英語上手だった」 おいおい、電話の取次ぎなら、ちゃんと相手の名前を聞いてくれよ。 そう思うが、とりあえず、英語が上手なら本社からだろうし、またおって電話かメールがあるだろうと考える。 その日は一日、報告書の作成に追われた。 宿舎に戻るともう11時。 アメリカはもうすぐ正午だが、とりあえずアナの家に電話をする。 ルルルル、、、 鳴り続けるが、誰も出ない。皆出払っているんだろうな。 アレックスは、今度はパソコンに向かい、メールを送る。 “上海に戻った。電話するよ。何時がいい?” こちらはすぐに反応があった。 “メールは送信できませんでした” あれ? メアドはもう自動で入っているので、間違えるはずもないのだが。 もう一度確認して再送する。 同じことだった。 どうしたんだろう。回線の調子でも悪いのかな。 アレックスはとりあえずシャワーを浴び、寝る支度をしながら、また電話してみた。 ルルルル、、、 「はい」 よかった、通じた、とホッとする。 「もしもし、その声はエリカちゃん?」 向こうで息を呑むような音がした。 「アレックスですか」 「うん。元気かい? アナ、いつ帰ってくる?」 「もう電話はしてこないでください」 「は?」 「もう2度と電話してこないで!」 ガチャ。ツー、、、 (え、、、) 無機質な音を立てる受話器を、呆然と眺める。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加