フラワーガールの恋

44/102

302人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
前にもこんなことがあった。 あの時は、すぐに夜行の飛行機に飛び乗って、彼女の元へ駆けつけた。 今の自分には、そんな自由はない。 (なんなんだ、、、) 今回クリスマスに帰れなかったことが、そこまで彼女を怒らせてしまったんだろうか。 無理はないかもしれない。 でも、自分だって、ほんとは帰りたかったんだ。ものすごく。 アナに会いたくて、触れたくて、抱きしめたくて、たまらなかったのに。 諦めきれずにもう一度メールを送ってみたが、やっぱり戻ってくるだけだった。 今度エリカでなく、アナのいる時間帯に電話をするしかない。 それっていつごろなんだろう、、、。 アレックスは膝の上でこぶしをきつく握り締めた。 *** 結局それから何度も電話したが、鳴り続けるだけで誰も出なかった。 もちろんメールは通じない。 仕事中にも隙を見て国際電話をかけた。 通じない。 3日立っても、5日立っても。 そんなに怒らせてしまったのか、、、。 もしかしたら何か連絡が入っていないだろうか。 メール画面を頻繁に見るようになった。 このままでは仕事にも支障が出そうだった。 自分にとってほんとうに大事なものはなんだろう。 ほんとうに失いたくないものは。 アレックスは考え抜いた。 そして最後の通信手段に出ることにした。手紙を書いたのだ。 ――― 今の仕事はあと1年でだいたいのめどがつく。 社長には5年いてくれと言われたが、故郷に恋人がいるので3年が限度だと言ってある。 それでも君がもう、どうしても待てないというのなら、転職も考える。 だけどそうするには君の同意が必要だ。いつでもいいから、電話してくれ ――― 、、、電話が鳴ることはなかった。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加