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前にもこんなことがあった。
あの時は、すぐに夜行の飛行機に飛び乗って、彼女の元へ駆けつけた。
今の自分には、そんな自由はない。
(なんなんだ、、、)
今回クリスマスに帰れなかったことが、そこまで彼女を怒らせてしまったんだろうか。
無理はないかもしれない。
でも、自分だって、ほんとは帰りたかったんだ。ものすごく。
アナに会いたくて、触れたくて、抱きしめたくて、たまらなかったのに。
諦めきれずにもう一度メールを送ってみたが、やっぱり戻ってくるだけだった。
今度エリカでなく、アナのいる時間帯に電話をするしかない。
それっていつごろなんだろう、、、。
アレックスは膝の上でこぶしをきつく握り締めた。
***
結局それから何度も電話したが、鳴り続けるだけで誰も出なかった。
もちろんメールは通じない。
仕事中にも隙を見て国際電話をかけた。
通じない。
3日立っても、5日立っても。
そんなに怒らせてしまったのか、、、。
もしかしたら何か連絡が入っていないだろうか。
メール画面を頻繁に見るようになった。
このままでは仕事にも支障が出そうだった。
自分にとってほんとうに大事なものはなんだろう。
ほんとうに失いたくないものは。
アレックスは考え抜いた。
そして最後の通信手段に出ることにした。手紙を書いたのだ。
――― 今の仕事はあと1年でだいたいのめどがつく。
社長には5年いてくれと言われたが、故郷に恋人がいるので3年が限度だと言ってある。
それでも君がもう、どうしても待てないというのなら、転職も考える。
だけどそうするには君の同意が必要だ。いつでもいいから、電話してくれ ―――
、、、電話が鳴ることはなかった。
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