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アナは史書になるための資格を2年で取り、幸運にも地元の図書館に仕事を得た。
24歳になっていた。
図書館の仕事は地味ではあったが、午前中は小さい子達のために絵本を読んであげる会を開き、午後は小中学生のために読書アドバイスをする。
それなりの充実感はあった。
しかし長引く不況で学区の財政源への大幅なカットが行われ、扶養家族もなかったアナは真っ先に解雇されることになった。
(また家庭教師に戻って仕事探しをするしかないかなあ、、、)
28歳になっていた。
来週がここでの最後の週だというある日、アナは貸し出し係を手伝っていた。
よくここを訪れる中年男性が、今日も訪ねてきていた。
無類の本好きらしく、時々書架を整理しているアナを捕まえて、最近読んだ本についていろいろと話すような人だった。
「この本、もう読まれたんですか」
確か彼がこれを借りていったのは、一昨日のことだ。
「うん、なかなか面白かった。君の推薦はいつも的を得ているね」
「そうですか、それはよかったです」
「この2週間ほどは忙しくなるんで、急いで読んだんだよ」
「そうなんですか」
この人、平日に図書館に来るなんて、どんなお仕事なんだろう。
「再来週には息子のテストが終わって店を手伝ってもらうんで、また時間ができる。また何か推薦してもらえるかね」
「はい、でも、、、」
アナは自分が来週にはここをクビになると彼に告げると、その男性は大きく目を見開いた。
「で、君はその後どうするんだね」
「どうするも何も、、、また仕事を探します」
「そうか」
男性は少し考えるようなしぐさをしたあと、ポケットから札入れを取り出し、何か紙切れを取り出した。
「これを持っていてくれるかな。あとで連絡してもいいかい」
それは名詞で、表にこう書いてあった。
“書店 Prose and Mind Vincent Stern” と。
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