フラワーガールの恋

51/102

302人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
故郷の小さな本屋で、家族ももういない町で、ひとり店長をしているアナ。 名刺を差し出すと、「えっ、あの本屋で働いているの?」 と意外そうに言われる。 、、、なら何をしていたなら、意外じゃなかったのか。 (これ以上好きになれる仕事はないんだから、大きなお世話よ) 1次会が終わったらすぐ帰ろう、アナはそう思いながら荷物をまとめ始めていた。 その時、元クラスメートの一人がアナに言った。 「ねぇ、あなたあのころ、上級生のアレックス・リチャードソンと付き合ってなかったっけ?」 アレックス。 その名を久しぶりに聞いたとき、アナの胸に鈍い痛みが走るのを感じた。 なぜ、いまさら。 「さあ。昔の話よ」 「いつ別れちゃったの?」 余計なお世話だ。 「実は最近、彼のうわさを聞いてね」 そんなこと知りたくない。 「今上海にいるんだって? なんか有名なテレコム会社、どこだっけかな、そこの重役のお嬢さんと結婚するんだって」 、、、、、、! 「それは、よかったわね」 普通に、言えただろうか。 声が、掠れていなかっただろうか。 あれからもう11年もたつんだ。 むしろ今まで何もなかったことのほうがおかしい。 それなのに。 それなのに、なぜこんなに抉られるような痛みが --------- 忘れていたのに。 忘れたと、思っていたのに。 アナは、ゆっくりと目を閉じた。 そして、すぅ、と気づかれないように大きく息を吸って、はいた。 大丈夫。 私は、何も感じてない。 心を守るために築いた壁を、さらに高くする。 私には、関係がないことだ。 自分にそう言い聞かせると、「じゃ、お先に」 と言ってバッグを掴んで、会場の店の外へ出た。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加