フラワーガールの恋

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*** アレックスは、それから毎週、週に何度か夕方から夜にかけてProseにやってきた。 とはいっても、あれからアナには話しかけては来ない。 目が合うと会釈はしてくれるが。 彼は来ると、いつも常連客が集まっているカフェのテーブルにまっすぐ向かう。 海外での経験が豊かなアレックスの話は面白いらしく、いつも笑い声やら驚きの声やらで、その一角は盛り上がっていた。 まるでもう何年も前からここに来ているかのように、すっかり常連客の話の輪の中に溶け込んでいた。 話しかけては来ないが、彼が店にいるときはあのウェーブが流れてくるおかげで、やはり気が散って仕方がなかった。 (まったく営業妨害だわ) アナは理不尽な憤慨をこめた視線を、こっそり彼の後ろ姿にぶつけてみたりした。 それにしても。 ― どうしてここに毎週来るの? ― もうこちらにずっといるの? 聞きたいことはいろいろあるのに、再会したあの日に崩せなかった心を覆い尽くす壁のおかげで、聞くきっかけを失っている。 いや、違う。 20年以上もかけて築き守り続けてきた壁を崩せば、今まで均衡を保ってきた自分の心がどうなってしまうか、、、それが予想できなくて怖かったのだ。 特に一番気になっている質問の答えが、わからないままでは。 ― どうして、、、どうして指輪をしていないの?
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