フラワーガールの恋

64/102

302人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
*** ザァァアアアー 滝のような雨。 しぶきで、向こう10メートルより先はまったく見えないくらいだ。 (車で来ればよかった、、、。止むまで待つか) 今日はせっかく7時で帰れる日なのに。 見たかったドキュメンタリー、録画予約してくればよかったな。 「いやすごい雨っすねえ」 常連客たちも、諦め顔だ。 この時期のこの地方の天候は、変化が激しくて予測がつかないことが多いのだ。 雨はしばらくすると小降りになったが、止んではくれない。 自転車は諦めて、バスで帰るか。 そう思いながら、戸口から外を見上げたとき、後ろから声がかかった。 「送っていくよ」 聞き間違うはずのない、その声。 振り返らずに言う。 「いえ、大丈夫です」 「誰か迎えに来てくれるの?」 「え、いや、あの、」 どう答えるべきか一瞬迷っていると、さらにきっぱりとした声が飛んできた。 「送ってもらいなよ。せっかく俺がいるんだし、早く帰れる日は早く帰ったら」 この店の現オーナーのジョーだ。 「、、、」 「ね?」 にっこりと、でも有無を言わさないような笑顔で言われてしまった。 「、、、わかりました」 オーナー命令じゃしょうがない、と妙な言い訳を自分にして、裏口につけたアレックスの車に乗る。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加