フラワーガールの恋

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そういえばこの前、カフェの片隅でこの二人が話しているのを目にしたような気がする。 いったいジョーは何をどこまで知っているんだろう。 あの人は人のことより、自分のことをもっと考えた方が -------- 「家、どこなの?」 運転席からの声にハッと我に帰る。 「え、あ、」 そのとき。 ぐるるるるるっ その場に似つかわしくない大きな音が鳴り響いた。 (ひゃあああっ!!) 「ぷっ、」 ああもう恥ずかしい。今すぐ車を降りて逃げ去りたい! 隣で笑いを噛み殺している人を、恨みがましい目で見やる。 「す、すみま、」 「おなかすいてるんだ。じゃあまず、どっかに食べに行こう?」 「え?」 「却下はなしだよ。俺も実は腹へって死にそうなんだ」 「でも、」 「それともまた俺に、あんなインスタント食品を一人で食べろとでも?」 いや別にそれは私のせいじゃないしと内心思いながらも、もう決定事項であるかのようにハンドルを切るアレックスに、なぜかこれ以上は反論できなかった。 車の中に二人きり。 目の隅でこっそりと彼のほうを見る。 肘まで捲り上げたシャツから見える、日焼けした腕。 昔は、あの腕に、、、そこまで考えて、アナは焦って頭を振って妄想を消し飛ばした。 「どうしたの」  不思議そうにアレックスが聞く。 「べ、別に!」 彼はアナの方をちらっと見ていぶかしげな顔をしたが、すぐに前を見て運転に集中した。
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