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アレックスがざっと洗ったものを、アナが食洗機に並べて入れていく。
二人で暮らしたら、こんな感じなんだろうか。
「アナ、」
アレックスの声に、アナの際限なくひろがっていた想像は途切れた。
「あのころは本当に、待たせ続けてすまなかった。でも本当に、君の元に帰るつもりでがんばっていたんだよ」
「うん」 もういいよ、もういいんだ。
アナは心の底からそう思った。
片づけが終わると、もうかなり遅い時間になっていた。
「念のために聞くけど、迎えに来てもらわなくていいの」
「そんな人いないわ」 アナが即答する。
「じゃあ堂々と君を送れるな」
「別にタクシーで、、、」
冗談じゃない、とアレックスは言ったその言葉通り、アナをマンションの目の前まで送り届けた。
彼の車を降りるときに、アナは一瞬、躊躇した。
ここまで送ってくれたんだし、あがってもらってお茶でも、、、。
でももう深夜といっていい時間帯だし、、、。
「じゃあ、また」
そんなアナの葛藤を知ってか知らずか、アレックスは穏やかな声でアナに言った。
「ちゃんと無事に建物の中に入るまでは、ここから見届けるから」
そういって車のハンドルに頬杖をついて、こちらに笑顔を向けた。
そういわれては、中に入るしかない。
部屋に戻って、窓際に駆け寄って外を見ると、遠ざかるアレックスの車のテールランプが見えた。
やだ、帰らないで。
もっと一緒にいたいの。
胸の奥が焼け付くような思いだった。
今度彼と二人きりになったら、、、
そう、素直に言おう。
もう、別々の場所にいるのは嫌だと。
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