フラワーガールの恋

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外はすでに土砂降りだった。 焦っているのか傘がうまく開かない。 いいや、もう、濡れて帰ろう。 アナがそう思ったとき、頭上から傘を差しかけられた。 「濡れるぞ」 「結構ですから!」 「アナ、」 酷く濡れたまま歩きだそうとするアナの腕をアレックスが掴んだ。 「放して!」 「アナ!」 自分の方に引き寄せる。 「また私を置いていくくせに!」 「置いていきたくないから、ついてきてくれと言ったんだ!」  「無理なのよ!」 「アナ!」 もうアレックスもずぶ濡れだ。 「放して!」 抵抗するアナを抱きすくめる。 「放してったら、」 「嫌だ!」  めったに語気を強めない穏やかな性格のアレックスから、初めて聞く怒鳴り声。 雨なのか涙なのかもうわからないぐしゃぐしゃのアナの顔を、アレックスの両手が包み込む。 「ごめんアナ、本当にごめん、、、でも本当についてきて欲しいんだ、、、」 そういうとアレックスは、冷たい雨で冷え切っているアナの額に、唇を押し当てた。 *** 雨がようやく小降りになりはじめ、アレックスはアナを拘束していた腕を緩めた。 幸いにこんな天気なので、人通りもない。 でもふたりともずぶ濡れで、とてもタクシーなどには乗れそうにない。 アレックスの家ならここから歩いていけないことはなかった。 とにかくこのままでは体が冷え切ってしまっていて、風邪をひいてしまいそうだ。 寄っていってくれれば服を貸すから、そこから車で君の家まで送る、と彼は主張した。 「歩いて帰るわ」 「そんな格好で、一人でか? 冗談じゃない」 手を離してくれない。 根負けしたアナは、アレックスの家に寄ることにした。 入り口で靴を脱ぐ。パンプスの中まで水が入ってぐしゃぐしゃだ。 「熱いシャワーで温まった方がいい」 とアレックスが柔らかなタオルを渡してきた。 バスルームの鏡を見ると、雨で冷え切った顔は青白いのに、目は真っ赤なままだった。 「酷い顔」 思わずそう自分につぶやくと、苦笑がこぼれた。
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