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秋の雨に濡れて冷え切った服が、肌に直に触れて気持ち悪い。
とにかく脱いで、熱いシャワーを浴びてしまおう。
そうすれば、この服同様にぐちゃぐちゃな気持ちも、少しは整理できるかもしれない。
しかしそこでアナは、大きな問題に直面した。
化繊のすっぽり被るタイプのブラウスが、濡れて肌にぴったりと貼りついてしまって、脱げないのだ。
「、、、!」
どう引っ張ってもあがいても、めくりあげることすらできない。
無理に引っ張ると破いてしまいそうだ。
困ったな。
そのとき。
「お湯の出し方、わからない?」
いつまでたってもシャワーの音がしないので不思議に思ったのか、アレックスがドア越しに聞いてきた。
「あ、いいえ、大丈夫」
焦って答え、もう一度頑固なブラウスと格闘してみる。
「はぁ、、、」 ダメだ。
ああ、もう背に腹は変えられない。
「アレックス」
バスルームから顔だけ出して、彼を呼ぶ。
「どうした」
彼がやって来た。
「この服、体に貼りついて脱げない。ちょっと手伝って」
「、、、わかった」
アレックスはあきらかに困惑した顔をしたが、アナにバンザイの格好をさせて、濡れたブラウスを剥ぎ取った。
破かないように、ゆっくりと。
途中、豊かな谷間が目に入り、彼は思わず目をそらした。
「じゃ、ごゆっく、」
「待って」
目を伏せたまま足早に出て行こうとする彼を、アナは引き止めた。
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