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***
(まだ朝の5時か)
目覚ましもなしに目覚めたアレックスは、静かに腕時計を元の位置に戻した。
隣では、アナが微かに寝息をたてている。
あれからシャワーには入ったものの、彼女を求める自分を抑えきれず、結局ろくに温まりもせずに寝室に連れて来てしまった。
自分でもどこにこんなスタミナが残っていたんだと思うくらい、何度も何度も彼女を抱いた。
学生時代のあのころでも、こんなに激しくなかったんじゃないか、と自分に苦笑する。
そしてアナも、そんな自分の熱に充分答えてくれたのがすごく嬉しかった。
まだ夜明け前の部屋を見回す。広い間取りのベッドルームにダイニングとキッチン。
マンションとしては高級な類に入るこの部屋も、上海にいた時の住処に比べれば可愛いものだ。
副社長の時ですらも、大きな客間や居間、いくつもの寝室のあるマンションに住み、専用のコックを含め何人もの使用人がいた。
でもそんな贅沢な生活も、たった一人の愛しい人がそばにいないのでは、自分には意味がない。
アレックスは静かにベッドから出るとパソコンを起動し、アナの脱いだ、まだ湿ったままの服をまとめると乾燥機に放り込んだ。
***
よし。あとはもう一度あとで見直して、向こうの時間で朝になったら、送信してしまおう。
会長(CEO)は、今確か上海にいるはずだから。
これでいいんだ。
パソコンで長いメールを打ち終えたアレックスは、静かにうなづくと、ベッドの方を振り返った。
(まだ6時前か)
まだ深い眠りに落ちたままのアナを見つめ、その髪に小さなキスを落とすと、ふたたびその脇に潜り込んだ。
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