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「でも昨日の君は、、、」
あれほどまでに、何度も俺の名前を愛しそうに呼び、何度も俺にしがみついてその先を求めてきたじゃないか。
アレックスは昨夜の、自分を切なそうに見つめるアナの表情を思い起こす。
「久々だから。欲しかったの。私も女だし」
さすがにアナは、周りに誰もいないか見回してから、言葉を続けた。
「でも正直、思ったほどよくなかった」
「嘘だ!」
昨日の乱れに乱れた彼女を思い出しながら、アレックスは反論した。
「男のあなたに何がわかるというの?」
アナは苦笑を浮かべて言い放った。
アナのいう事が本当だとは、アレックスには到底思えなかった。
けれどショックなのは、どうしてそんな嘘までついて、自分を突き放したいのだろうかということだった。
「ねぇ、私は今までProseの店長として、とても充実した日々を送ってきたのよ」
かなり暗いので表情はわかりにくいが、声は毅然としたまま、アナは続ける。
「この生活を変える気はないわ」
「変えろなんて言ってない。一緒に暮らして欲しいだけだ」
「まだわからないの?」
ふっとため息混じりに、呆れたようにアナは話す。
「今までずっとひとりで、自分のペースで気楽に生きてきたのよ? いまさら他人となんか窮屈で暮らせないわ」
「アナ、」
「もう、会うのもやめましょう? なんかもう、そういうの重たくって、うざったくなってきちゃった」
「まさか本気でそんな、」
耳に入ってくる言葉が信じられないアレックスは、アナの表情をもっとよく読み取ろうと、彼女に手を伸ばしかけた。
「ね、わかって? もう付きまとわれるのは迷惑なの」
「迷惑?」
アナに触れようと伸ばしかけていたアレックスの手が、力なく下ろされていく。
「そうよ、ほんとに迷惑なの、、、!」
強い語調で、アナはそう言い切った。
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