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「アナ、俺は、」
掠れた声からどれだけ彼が傷ついているか察しがつくアナは、怖くて彼の方を見ることができない。
俯いたまま、立ち上がった。
涙がこみ上げてくる前に、この会話を終わらせなくては。
「さよなら。元気でね」
ありったけの意思を動員して、できる限りきっぱりと聞こえるように言い放つと、アナは振り返りもせずにベンチを後にした。
早歩きで公園の出口に向かうが、アレックスが追ってくる気配はない。
そのことにがっかりしている自分に嫌気がさす。
あれだけ酷い言葉をいくつも彼に投げつけたくせに。
「く、ふ、、、」
公園を出ると耐え切れずに走り出した。
Proseに戻るとディスプレイ以外の部分は電気が消され、真っ暗だった。
もう10時近く。さすがに皆帰ったのだろう。
裏に回って鍵を開けて入ったスタッフルームも、窓から入る月明かりだけで、薄暗く静まり返っていた。
ドアを閉めるともう立っていられなかった。
「うっ、うっ、あううううっ」
嗚咽で息をするのも苦しい。
大好きな人を、あんなにも深く傷つけてしまった。
でもこれでいいんだ。
これでいいはずなんだ、、、
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