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「お姉ちゃんは、、、あなたのことを忘れてないわ、、、!」
その言葉に、アレックスは悲しそうに微笑むだけだった。
「ごめんなさい、私、、、」
エリカは唇を噛んで、言葉に詰まる。
「あなたがあのときに中国から送ってきた、お姉ちゃんへの手紙、隠したの」
「、、、」
「そのあと会った時に渡してっていわれたメッセージも、渡さなかった。だってあのころ、」
泣き声になってくる。
「あのころ、お姉ちゃん、ほんと見てても辛そうで。このままじゃおかしくなっちゃうんじゃないかと思うくらいだった。だから、あなたのことなんか早く忘れてしまえばいいと思ってた。もう何年も帰ってこない人のことなんか」
「エリカちゃ、」
「でもまたお姉ちゃんと会ったんでしょう? ここのところ、お姉ちゃん、すごく幸せそうだった。電話で話しててもわかったよ」
「、、、」
「なのにどうして、どうしてまたお姉ちゃんを置いていっちゃうの!!」
最後はほとんど泣き叫んでいた。
「私が悪いの? あのとき手紙を渡してれば、もう2度と中国へ行かなくてすんだの!?」
エリカの頬にいくつもの涙の筋がつき始めた。
「エリカちゃん、」
アレックスは優しくかすかに微笑んだ。
「手紙のことは、気にしなくていいよ。もう昔のことだ」
そしてふぅーっと息を吐いた。
「それに、今回も俺は同じことをした。だけどやっぱり断られたんだよ」
「え、、、」
アレックスの笑みは、悲しい微笑に変わっていた。
「じゃ、元気で。お姉ちゃんと仲良くね」
そういうと手を軽く挙げて、振り向いて歩き出してしまった。
「待って、それ、お姉ちゃんの本心だと思う!?」
彼は一瞬歩みを止めたが、またすぐに歩き出して行ってしまった。
なすすべもなく見送っていたエリカは、突然はっとすると、急いで式場へ戻った。
アナの姿はすぐに見つかった。
棺の上に置かれていた、白い蘭の大きな花束をじっと見つめていた。
「お姉ちゃん!」
「あ、エリカ。これ、どなたが、、、?」 花束のほうに目線を投げる。
「あの人が来ていたの。早く、いっちゃう!」
その言葉が終わらないうちに、アナは外へと飛び出した。
けれど駐車場へ続く長い坂道には、もう誰の人影もなかった。
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