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翌日。
母の部屋で、姉妹は床の上に大小の箱や袋を並べて、彼女が遺したものを整理していた。
几帳面だった母の性格のおかげだろうか。
持ち物はかなり処分されていて、整理は思ったより早く済みそうだった。
「あ、これだ」
エリカが、アナに小さなクッキー缶を渡す。
「お姉ちゃんに渡したいって言ってた箱」
そういえば。
最後に母と話したとき、箱がどうとか言っていたなあ。
「お茶入れてくるね」
エリカはキッチンへとたっていった。
アナは箱の周囲にぐるぐると巻かれていたテープをはがして、ふたを外す。
中にはたった3通、手紙らしきものが入っていただけだった。
手紙とは、またこの時代にクラシックな、、、。
まあママはパソコン苦手だったからな。
スカイプのやり方を教えた時も、「機械通して顔見て会話なんてしたくないわよ!」 って憤慨してたっけ。
母のそのときの顔を思いだして、笑いがこぼれる。
その笑顔は、1つ目の手紙を取り出してみて、すぐに消えた。
それはアレックスからの手紙だった。
遠い昔、彼が大学を出て中国に赴任して、約束したクリスマスに帰れなかった、あのころの彼からの。
―――― アナ、約束したのに、クリスマスに戻れなくて本当にごめん。
電話もメールも上手く通じないんで、これを書いている。
悲しい思いをさせてしまったと思う。
本当にすまなかった。
今、かなりがんばっているんで、現在関わっている仕事は後1年くらいでめどがつくと思う。
そうしたら誰に何を言われようと、絶対に君の元に帰る。
それですらも待てないと言うのなら、、、転職も考える。
でもそのためには、君がどう考えているかを知りたいんだ。
いつでもいいから電話をしてくれ。
愛している。 アレックス
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