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もうひとつは、封筒に入ったメモ用紙に走り書きされた、彼からのメッセージだった。
手紙よりさらに具体的であった。
―――― 愛しいアナ、
寂しい思いも辛い思いもたくさんさせてしまって、本当にごめん。
でも離れていたこの2年間、いや6年間、何度も考えたけど、やっぱり行きつくのはアナ、君のことだ。
どうしても僕には君が必要なんだ。
早く帰国させてくれと希望を出しているが、それが無理なら転職してそちらに戻るつもりで、もうすでにいくつかの会社と話を始めている。
だから、君の気持ちを聞きたい。
このメッセージを受け取ったら、昼間だろうが真夜中だろうが、すぐに携帯に電話してくれ。
そうしたらすぐに、もっと具体的に今後の話を進めていくから。
もう離れ離れの生活はおしまいにしたいんだ。
君もまだそう思ってくれているなら、電話して? お願いだから。
早く会いたい。 アレックス
手紙からも、メモからも。
アレックスの悲痛な叫び声が聞こえてくるようだった。
ーーーー 君とこれ以上離れていたくない。
ーーーー 君といっしょにいたいんだ。
そう思っていたのは、自分だけじゃなかったんだ、、、。
なのに、その声に答えることなく、それから20年も過ぎてしまった。
最後の1通は、母からの手紙だった。
―――― 最愛のアナへ
最近あなたの残していったものをようやく整理し始めて、この2つの手紙を発見しました。
捨てていいのか確認するため、開封して目を通して、驚きました。
もっと早くあなたに渡せればよかった。
先日、彼が訪ねてきてくれたので、渡せなかった手紙のことを話しました。
彼は 「ありがとう。でも、もういいんです」 と言っていたけど、何があったの?
本当にあなたはそれでいいの?
今まであなたにずっと甘えていたようだわ。ごめんなさい。
もうこれからは自分のことを考えて。
時は待ってはくれないのよ。
彼にあるものを託しました。
断られたけど、あなたに渡すだけは渡して、とお願いしたわ。
どうか、幸せになってください。
あなたのママより
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