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(ママに会いに来ていたんだ、、、)
彼女が、亡くなる前に。
だから、蘭の花を手向けに来てくれたのか。
読みながら、文面が霞んでいくのをどうしても止めることができなかった。
涙を紙面に落とさないように、何度も指で目をぬぐった。
それにしても。
ここまで、私のことを考えて、一緒になろうとしてくれていたのに。
1度目は突き放して、2度目はあんなにひどいことを言ってしまった。
もう取り返しがつかない、、、。
「く、ふっ」
アナは手紙を置くと、座ったまま、両手を膝の前について俯いた。
あっという間に、ぽたぽたと水滴が絨毯にシミを作っていく。
「お姉ちゃん」
振り返ると、カップを乗せたトレイを持ったエリカが、戸口に青ざめた顔で立っていた。
「その手紙、まだあったんだ、、、」
「、、、」
「ごめんなさいっ!!」
エリカは、カップをそばの棚の上に置くとひざをついた。
「あの時は、ほんと、お姉ちゃんが苦しんでいるみたいで、見ていて我慢できなかったの」
エリカはアナの手を握り締める。
「お姉ちゃんなら、他にステキな人が見つかるはずなのに、なんでいつまでも帰ってこない人を待ってるんだって思ってた」
「、、、」
「早くあの人のことを忘れて欲しかった。だから、手紙を渡さないことにしたの」
「、、、」
「ごめんなさい! ずっと気になってた。でも言えなくて、、、。彼が戻ってきて、また会ってるって聞いて、ああ今度こそは一緒にいられるんだ、よかったなあと思ってたのに」
アナはそこで初めて顔を上げて、エリカの方を見た。
「、、、また別れちゃったの? どうして? どうしてなのっ!!」
「いいの。もういいの。もういいのよ、、、」
まるで自分の代わりのようにポロポロと泣き出したエリカの手を、アナはそっと握り返した。
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